黒川発電所

発電所全景
 黒川発電所は、最初大田原電気㈱によって黒川と那珂川が合流する現在の発電所位置に建設を計画しましたが、その後、大田原電気㈱が合併の主体になり、塩那電気㈱が誕生し、大正7年(1918)から工事に着手し、大正10年(1921)完成しました。
 この発電所は、横軸前口双輪フランシス水車(日立製)で、認可出力は800kwであり、塩那電気㈱のもので最も大きな出力の発電所として、その威容を誇ったといわれます。
 建設時の作業員は地元労務者と県内外の遠隔地からの出稼ぎ者が半々ぐらいで飯場生活は気性の荒い渡世人が多く喧嘩が起き、巡査が仲裁に当たったこともあったといわれています。
 水は黒川と余笹川から取水して、那珂川合流点まで導水していますが、平成10年(1998)の那須水害で取水施設は大きな被害を受け、両川の改修計画に合わせ全面改築されました。
 土木学会は平成20年度(2008)の土木学会選奨土木遺産に「黒川発電所膳棚水路橋」を認定しました。その他、関東地区では神奈川県相模原市の「小倉橋」(昭和13年完成)、埼玉県戸田市・さいたま市地内の「荒川横堤」(昭和9年完成)、東京都台東区~港区の「銀座線・浅草駅~新橋駅」(昭和2年~昭和9年完成)など全国では23件が選ばれました。すでに県内では、平成14年度(2002)に晩翠橋が、平成17年度(2005)に宇都宮市水道施設群(今市浄水場戸祭配水場第六接合井が、平成19年度(2007)に境橋が認定されています。何れも、本ホームページに掲載しています。


  平成20年度土木学会「選奨土木遺産」に認定
(左)膳棚水路橋
    鉄筋コンクリート造
      延長 : 100.60m
       幅   : 1.515m
       高 さ : 1.818m
       大正10年(1921)建設
 大正期の見事なRC技術により、3本橋脚に×形に筋交いの入った特殊なRC橋脚です。
 なお、水路側壁を支える三角バットレス群の造形は特に素晴らしいです。

(右)水槽・制水門
   練石積及びコンクリート造
        高さ : 3.55~2.42m
        長さ : 21.00m
        幅  :  8.90m
        鋼製スライドゲート 2門
        大正10年(1921)建設

  8月末の豪雨による余笹川の出水状況
小さな人影は行方不明者を捜しているところです
       (余笹川流域河川改修事務所 提供)


 
余笹川災害復旧事業(一定災)により改築された黒川発電所 余笹川取水堰
  洪水吐ゲート:鋼製シエル構造転倒ゲート 1.60H×23.70B×3門
  土砂吐ゲート:鋼製ローラーゲート 2.10H×3.60B×1門
  取水口ゲート:鋼製ローラーゲート 1.50H×2.50B×1門
  完   成 : 平成13年4月 
   

那須水害
 平成10年(1998) 8月末の台風4号により前線が刺激され、栃木県北部は局地的に激しい豪雨となり、27日午前2時には、那須地区で時間雨量90㎜の猛烈な雨を観測しました。
 また、26日の降り始めから31日にかけての総雨量は1,254㎜を記録し、この大雨により余笹川を始め、黒川、四ツ川、那珂川などの河川が氾濫し、激甚な被害を受けました。
 県内の被害:死者5人、行方不明者2人,床上浸水486棟、床下浸水2,362棟、罹災者1,779人
                                                (栃木県消防防災課 資料) 
   


案 内 図
所 在 地  
管 理 者  
建設時期  
用途・目的
規   模  
   
那須町稲沢
東京電力㈱
大正10年(1921) 7月発電開始
水力発電
形 式 : 水路式
発電所最大出力 : 920kw
最大有効落差  : 30.30m
最大使用水量  : 3.617㎥/s

参考文献
栃木支店 水力発電史・東京電力(株)栃木支店水力発電史編集委員会
日本の近代土木遺産 現存する重要な土木構造物2000選・土木学会土木史研究委員会


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