無念橋

苔むした石橋に静寂がただよう
 「日光山志」などによれば、滝尾神社境内には、本殿後方の御神木( 三本杉)への参道に架かる無念橋、子種石へ通う妙覚橋、同所より下向する道にある等覚橋の3基の石橋があったと記されています。
 しかし、現存しているのは無念橋だけです。三本杉を通して、御神体の女峰山を遥拝するため、自分の身を清め俗界と縁を切る橋とされ、念を断ち切り空になることから名付けられました。別名、願いがかなうことから「願い橋」とも呼ばれています。
 この橋の本体は幅・長さとも1.2mほどの小さなもので、橋板は3枚(1.22m×0.38m)を弧状に加工し、左右の橋板には高欄を付けて、3枚連ねた太鼓橋のような反り橋です。橋の前後は幅2mの一石から細工した2段の石段となっています。橋下には幅30pほどの堀がありますが、水路は通じておらず、実用よりも宗教的な意味あいが強いと考えられます。
 石段側面に延宝5年(1677)の年紀があり、栃木県に現存する最古の橋で、国の重要文化財(有形文化財・建造物)に指定されています。栃木県では橋自体が国の重要文化財として指定を受けているのは、日光神橋とこの橋のみです


御神木「三本杉」へ至る無念橋(滝尾神社本殿の裏)

御神木「三本杉」
 弘法大師が、この山で修行した時、祈りにこたえて女体霊神(田心姫命(たごりひめのみこと))が現れた降臨の地。三本杉を通して御神体の女峰山を遥拝します。


運試しの鳥居
 元禄2年(1689)に三代将軍家光の忠臣、梶定良が奉納したもので、鳥居の額束(がくづか)(中央の縦の部分)の丸い穴に小石を三つ投げ、穴を通った数で運を試したといいます。
 御影石の明神造り鳥居は、世界遺産「日光の社寺」登録建造物103棟の一つです。

杉の大木に囲まれた石だたみの歩道
 自然石を丹念に並べた石だたみの道は、人が少なく静まりかえり、江戸の昔にタイムスリップしたような雰囲気をもっています。
 史跡探勝路コースとして整備されています。




所 在 地   日光市山内
管 理 者   日光二荒山神社
建設時期  延宝5年(1677) 完成
用途・目的  社参橋
規   模   橋長・幅員:1.22m×1.14m
        形式:石造反り橋

案 内 図


参考文献
日光の石造美術品・日光市文化財保護審議会
絵葉書に見る郷愁の日光(石井敏夫絵葉書コレクションより)・中川光喜解説
もうひとつの日光を歩く(隠れた史跡を訪ねて)・日光ふるさとボランティア

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